FreePaper
海と陸との境界線、湘南を見つめるフリーペーパー「汀線-tei sen-」。
「生まれ育った海辺の街湘南の姿を、一枚の紙にのせて残していく。」それが、フリーペーパー汀線です。想いは少し複雑。
2015年1月1日 創刊 / B4サイズ
STORY
2015年1月1日。湘南を舞台に、B4サイズというフリーペーパーとしては大判サイズで創刊。
生まれ育った海辺の街の変わりゆく姿を、一枚の紙に残す。
作ることはすぐにできる、だけどこの想いは少し複雑。だからこそ、フリーペーパーというカタチで時間をかけて残せたら。
「湘南」への想いを、綴ります---。
今でも変わらない街の姿がある。
湘南は寂れていた。
80年代の熱気をのこして。
その中で育った私にとって、今の湘南の姿は変化が激しくついていくのに必死になっている。
皮肉的な言い方になるが、
なんでも白塗りの壁に、サーフボードが飾ってあるお店
海辺の真新しさが際立つ「たてもの」は新しいものでしか無かった。
それらは私にとっての湘南ではなく、
それだけが、今の湘南だと思われることが とても悲しかった。
80年代の熱気が残る海辺の街で生まれ育った“わたし” 街は変わる−。そう感じた。
壊されていく建物、つくられていくあたらしい街。
何かせずにはいられなかった。
そんな想いで湘南が舞台の、「汀線」を制作してきました。
誰かにこの街の素敵な
ところを感じてほしい。
そして、
よくないところも「素敵」なんだと言うことを言いたかった。
ただの自己満フリーペーパー。
それでも「言いたい」
そういう気持ちでした。
フリーペーパー汀線は、そんなフリーペーパーです。
海辺には潮風にあてられて錆び付いたラブホテル。
下品なヒカリをギラギラ光らせるネオン管
その道を走るのは、暴走族のバイク、
目にはそのテールランプが焼き付いている。
そんな光景もここ10年で消えつつある。
江ノ島の灯台は青だし、
(改装後シーキャンドルと呼ばれている。綺麗だよ。)
その下にある植物園は、
お金をはらってまで入るものでは無かった。
遊具も錆びついていたし食べ物だって
焼きそばにジュース、
ソフトクリームくらいしかない。
夏のにぎわいは冬には消え
ホントにひとが居なかった。
今では冬でも
イルミネーションで賑わう街になった。
何だろう。
なぜか、とてつもなく寂しい。
あたらしくなり、治安もよくなり、店も増えた。
人が来てくれることは良いことのはずなのに-。
消えていく建物、
消えていく世代、
消えていく時代の雰囲気。
ちょうど感じる年頃になった。
だから、今、残したいと思った。
私たちが過ごした湘南という街の姿を。
今でも変わらない街の姿がある。
毎日、江ノ島の方から朝日が昇る。夕方には西の大山箱根山が連なる海へ夕日は沈む。
かつて暴走族が爆音を轟かせていた134号線からは今でも美しい富士山が真正面に見える。
湘南の良いとことは、「こういう」ところだ。
変化の激しい街だが変わらない景色がいつでも迎えてくれる。
さみしさと、
あたたかさが同居する街。
私はこの街のこういうところが素敵だと思う。
とても優しい空気。つらいことがあったりしても潮風が慰めてくれる。
夏が気持ちを高揚させてくれる。 寂しい冬も、海のきらめきが眩しいのだ。
そこにある湘南の「あたりまえ」がこの街は本当に素敵だ。
消えていくことは悲しいし嬉しい。
だから私たちは
そんなあたりまえの姿と、時代と共に消えた情景。
これから消えていく
「何か」を、少しでも表現してのこせたらと
多少、思っている。
夏。潮風に誘われて大勢の人が集まる海の街、 湘南。
オミセもカフェもオシャレでイマドキなビーチ?違う。
わたしの湘南は、もっと…。
いつのまにか生まれ変わりいつしか消えていく
「街」や「情景」を、一枚の紙に残していく。
きっと、誰かが、好きになってくれるから。